緊急時の案内
急に息が苦しくなった、呼吸が弱く会話が難しい、意識がおかしい、窒息の危険がある場合は、通常の予約を待たず119番へ連絡してください。重症筋無力症では、まれに呼吸に使う筋肉が弱くなり、呼吸不全に至る「クリーゼ」が起こることがあります。(*1、*3、*5)
救急車を呼ぶべきか迷う場合は、実施地域であれば救急安心センター #7119 に相談できます。ただし、対象地域・年齢・受付時間は地域により異なります。明らかな呼吸困難や意識異常があるときは、#7119への相談で119番通報を遅らせないでください。(*5、*6)
重症筋無力症の概要
重症筋無力症(Myasthenia Gravis:MG)は、神経から筋肉への信号が伝わりにくくなり、まぶたや目、顔、手足などに筋力低下や疲れやすさが現れる自己免疫疾患です。(*1、*2)
神経と筋肉の接ぎ目である「神経筋接合部」の働きが自己抗体によって妨げられることで、筋肉に力が入りにくくなります。動作を続けると症状が強くなる「易疲労性」が特徴の一つです。(*1、*2)
症状が目に限られる「眼筋型」と、目以外の筋肉にも症状が現れる「全身型」があります。症状の部位や程度、経過には個人差があります。(*1、*3)
原因
アセチルコリン受容体(AChR)や筋特異的受容体型チロシンキナーゼ(MuSK)など、神経筋接合部の筋肉側にある分子に対する自己抗体が、信号の伝達を妨げます。ただし、なぜ自己抗体が作られるのかは十分には分かっていません。胸腺の異常との関連も知られていますが、その関係がすべて解明されているわけではありません。(*1、*2)
自己免疫性の重症筋無力症は、一般に遺伝性疾患とはされていません。遺伝子変異による「先天性筋無力症候群」とは別の疾患です。(*1)
主な症状
主な症状には、次のようなものがあります。すべての人に同じ症状が現れるわけではありません。(*1、*2)
- 片方または両方のまぶたが下がる(眼瞼下垂)
- 物が二重に見える(複視)
- 顔の筋肉に力が入りにくい
- 話しにくい、声が続きにくい
- 噛みにくい、飲み込みにくい
- 首、腕、脚などに力が入りにくい
- 呼吸に使う筋肉が弱くなり、息苦しくなる
同じ動作を繰り返すと力が出しにくくなったり、休むと軽くなったり、夕方に症状が強くなったりすることがあります。これを易疲労性、日内変動といいます。ただし、現れ方には個人差があるため、この特徴だけで重症筋無力症とは判断できません。(*2、*3)
受診の目安
まぶたが下がる、物が二重に見える、噛む・飲み込む・話す動作が続きにくい、首や手足に力が入りにくいといった症状が繰り返す、または続く場合は、医療機関へ相談してください。症状が現れる時刻、休むと変わるか、どの動作で困るかを記録しておくと、診察時に伝えやすくなります。確認のために無理に症状を起こす必要はありません。(*1、*2、*3)
これらの症状は、重症筋無力症以外の病気でも起こります。症状だけで病名を決めず、医師の診察を受けることが大切です。急な呼吸困難、意識異常、窒息の危険がある場合は、このページで判断せず「緊急時の案内」に従ってください。(*2、*5)
相談する診療科
重症筋無力症の診断と治療は、主に脳神経内科・神経内科が担当します。地域や年齢、症状によって受診経路が異なるため、診療科が分からない場合は、かかりつけ医や医療機関の相談窓口に確認してください。(*7、*10、*15、*16)
最初の相談先が分からない場合は、かかりつけ医や医療機関の相談窓口へ確認してください。呼吸困難などの緊急症状では通常外来を待たないでください。(*5、*7)
検査と診断
診断では、症状の経過と神経診察に加え、複数の検査を組み合わせます。一つの症状や検査結果だけで診断するわけではありません。(*2、*3)
血液検査
抗AChR抗体や抗MuSK抗体などの自己抗体を調べます。ただし、軽症例や眼筋型では、これらの抗体が陰性のこともあります。抗体検査が陰性という結果だけで重症筋無力症を否定することはできません。(*2、*3)
神経と筋肉の働きを調べる検査
反復刺激試験や単線維筋電図などで、神経から筋肉へ信号が伝わる状態を調べることがあります。目の症状では、診察所見やアイスパック試験などが検討される場合もあります。どの検査を行うかは、症状や医療機関の体制によって異なります。(*2、*3)
胸腺などを確認する検査
胸腺腫などの胸腺異常を確認するため、胸部の画像検査が検討されることがあります。検査の必要性は医師が個別に判断します。(*1、*3)
指定難病の診断基準と、医療費助成の認定基準は同じ意味ではありません。診断を受けただけで医療費助成が自動的に始まるわけではありません。(*2、*8、*9)
治療
治療は、症状を和らげる対症療法と、自己免疫の働きを調整する免疫療法が中心です。病型、抗体の種類、症状の程度、胸腺の状態、年齢、ほかの病気、これまでの治療と副作用などを考慮し、専門医が治療方針を検討します。(*1、*3、*4)
主な治療の種類には、次のようなものがあります。(*1、*3、*4)
- 神経から筋肉への信号伝達を助ける対症療法
- ステロイドや免疫抑制薬などの免疫療法
- 免疫グロブリン静注療法や血漿浄化療法
- 補体阻害薬やFcRn阻害薬などの分子標的治療薬
- 胸腺腫がある場合などに検討される胸腺手術
2025年の追補版には、新しい分子標的治療薬などの情報が追加されています。一方、薬の使い分けや治療を始める順番には、根拠が十分でない部分もあります。このため、治療法は病状や検査結果、合併症などを踏まえて主治医と検討します。(*4)
症状が軽くなっても、薬を自己判断で中止・増減しないでください。治療の効果と副作用、通院や日常生活への影響を主治医と相談します。(*1、*3)
日常生活での注意点
症状や治療への反応には個人差があります。日常生活では、次の情報を記録して主治医へ伝えると、状態を共有しやすくなります。(*1、*3)
- 症状が出る時刻と、休息による変化
- どの動作を何回ほど続けると困るか
- 食事中の噛みにくさ、むせ、飲み込みにくさ
- 話しにくさ、声の変化、息苦しさ
- 仕事、学校、家事、移動への影響
- 服用中の薬、市販薬、サプリメント
- 感染症や新しい薬の後に変化がなかったか
別の医療機関を受診するときや新しい薬を使う前には、重症筋無力症であることと服用中の薬を医師・薬剤師へ伝えてください。妊娠・授乳やワクチンについては治療内容によって注意点が異なるため、自己判断せず主治医に相談してください。(*1、*3)
医療費助成などの支援制度
重症筋無力症は、日本の指定難病11です。一定の重症度を満たす場合や、軽症でも高額な医療が継続して必要となる場合などに、医療費助成の対象となる可能性があります。診断名が付くだけで自動的に助成されるわけではなく、申請と認定が必要です。(*2、*8、*9)
対象条件、必要書類、申請窓口は居住地や時期によって異なります。主治医、自治体の担当窓口、保健所、難病相談支援センターなどへ相談し、申請前に最新情報を確認してください。(*8、*9)
受診前に整理しておきたいこと
これは病気を判定するセルフチェックではありません。医師へ状況を伝えるためのメモとして使ってください。
- いつから、どのような症状があるか
- 症状が出る場所(目、顔、首、腕、脚、話す・噛む・飲み込む・呼吸する動作など)
- 朝と夕方、動作前後、休息前後で症状が変わるか
- 症状が続く時間と、生活で困っていること
- これまでの受診、検査、治療
- 服用中の処方薬、市販薬、サプリメント
- アレルギーやほかの病気
- 家族が気付いた変化
- 医師へ質問したいこと
症状を確認するために、無理な運動や、飲み込みにくい状態での飲食などを試さないでください。呼吸や意識に異常がある場合は、記録より安全確保を優先してください。(*3、*5)
医療機関の探し方
まず、脳神経内科・神経内科があり、重症筋無力症を対象疾患として公式に掲載しているかを確認します。次に、初診方法、紹介状、予約方法、成人・小児などの年齢条件を、医療機関の公式サイトで項目ごとに確認してください。(*7、*10、*15、*16)
「神経免疫外来がある」「重症筋無力症を対象疾患として掲載している」「特定の医師の専門領域に重症筋無力症がある」は、それぞれ意味が異なります。研究実績や医師名だけで、現在の診療担当や新患受入れを判断しないでください。
今回確認した施設は全国を網羅した一覧やランキングではありません。公式掲載があっても、予約や受入れは保証されません。特に慶應義塾大学病院は、確認時点で重症筋無力症の新規紹介受入れ停止を公式掲載しているため、通常の新規受診先として案内できません。セカンドオピニオンの相談先としては公式掲載があります。(*11、*12、*13、*14)
FAQ
まぶたが下がるだけで重症筋無力症と分かりますか
分かりません。眼瞼下垂は重症筋無力症でみられる症状の一つですが、別の病気でも起こるため、症状の経過、診察、必要な検査を組み合わせて判断します。(*2、*3)
症状は時間帯や動作によって変わりますか
動作を繰り返すと力が出にくくなったり、夕方に悪化したりすることがあります。ただし、変化の仕方には個人差があり、この特徴だけでは診断できません。(*2、*3)
何科を受診すればよいですか
主な相談先は脳神経内科・神経内科です。地域、年齢、症状によって受診経路が異なるため、かかりつけ医や医療機関の相談窓口へ確認してください。呼吸困難などの緊急症状では通常外来を待たないでください。(*5、*7)
抗体検査が陰性なら重症筋無力症ではありませんか
抗体検査が陰性の例もあるため、陰性という結果だけでは否定できません。症状、診察所見、神経と筋肉の検査、ほかの病気の除外などを合わせて医師が判断します。(*2、*3)
家族に遺伝しますか
自己免疫性の重症筋無力症は、一般に遺伝性疾患とはされていません。遺伝子変異による先天性筋無力症候群とは別の疾患です。家族の症状について心配がある場合は医療機関へ相談してください。(*1)
症状が落ち着いたら薬を中止してよいですか
自己判断で中止・減量しないでください。治療を続ける期間や変更方法は、症状、治療効果、副作用などを踏まえて主治医が判断します。(*1、*3)
医療費助成は診断された全員が利用できますか
診断だけで自動的に利用できる制度ではありません。重症度などの基準、軽症高額などの条件、申請・認定があるため、主治医と居住地の担当窓口へ確認してください。(*2、*8、*9)
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StratMedica内の関連ページ
出典
- *1 難病情報センター「重症筋無力症(指定難病11)病気の解説(一般利用者向け)」
情報更新:令和7年11月(名簿更新:令和8年6月)/確認日:2026-09-22 - *2 難病情報センター「重症筋無力症(指定難病11)診断・治療指針」
診断基準等:令和6年4月1日/確認日:2026-09-22 - *3 日本神経学会「重症筋無力症/ランバート・イートン筋無力症候群診療ガイドライン2022」
第1刷:2022-05-18、第2刷:2022-08-30/確認日:2026-09-22 - *4 日本神経学会「重症筋無力症/ランバート・イートン筋無力症候群診療ガイドライン2022追補版2025」
発行:2025-05/確認日:2026-09-22 - *5 総務省消防庁「救急車利用マニュアル」
更新日:公式ページで確認できず/確認日:2026-09-22 - *6 総務省消防庁「救急安心センター事業(#7119)ってナニ?」
更新日:公式ページで確認できず/確認日:2026-09-22 - *7 東京慈恵会医科大学附属病院「脳神経内科」
2026-08-07現在/確認日:2026-09-22 - *8 厚生労働省「難病対策」
更新日:公式ページで確認できず/確認日:2026-09-22 - *9 厚生労働省「指定難病」
令和8年4月時点の資料入口/確認日:2026-09-22
医療機関情報に使用した公式ページ
- *10 東北大学病院「脳神経内科」(確認日:2026-09-22)
- *11 慶應義塾大学病院「神経内科」(確認日:2026-09-22)
- *12 慶應義塾大学病院「重症筋無力症の新規患者さん受け入れ停止について」(2023-06-30、確認日:2026-09-22)
- *13 慶應義塾大学病院「セカンドオピニオン外来対象疾患について」(確認日:2026-09-22)
- *14 慶應義塾大学病院「セカンドオピニオンについて」(確認日:2026-09-22)
- *15 大阪大学医学部附属病院「脳神経内科」(確認日:2026-09-22)
- *16 九州大学病院「脳神経内科」(確認日:2026-09-22)
